Who’s The Beatdown?

2006年12月21日
MTGのトーナメントでもっともよく見られる(そのうえ捉えがたく、また深刻な)間違いが、似たデッキ同士のマッチアップにおいて、どちらがビートダウンの側で、どちらがコントロールの側かということの判断ミスだ。このミスをしたプレイヤーは例外なく負ける。

たとえば、似たデッキ同士のマッチアップで、双方が本当に75枚同じデッキ(純正ミラーマッチ)でもない限り、片方がビートダウン(攻める側)、もう一方がコントロール(守る側)になる。これは双方がアグレッシブなデッキだった場合など、深刻なジレンマに発展することもあるんだ。

例を挙げよう。ワシントンのPTQで、チームメイトのAl Tran がトップ8をかけてスライと戦った。Alのデッキは白ウィニージャンクデッキで、普通はアグレッシブなデッキだ・・・だがスライに対してはそうじゃない。

1勝1敗の後の3本目、勝った方がトップ8に入る。

対戦相手のファーストアクションはジャッカルの仔。Alの手札にあったのは呪われた巻物2枚、剣を鍬に2枚、名誉の道行き、そして土地が何枚か。Alはジャッカルの仔に鍬をプレイせず、呪われた巻物を起動できるようになるか、火力を引くまで待つ構えを見せた。

Alの2ターン目、Alは2枚目の土地と呪われた巻物を出し、土地を1枚立ててターン終了。

相手の3ターン目、3枚目の土地からボールライトニングをプレイした。Alは剣を鍬にを打たざるを得ない。Alはそこから数ターン場をコントロールできたが、結局は火力で負けてしまった。

何が悪かったのだろうか?Alはビートダウンデッキで、相手のジャッカルの仔とダメージレースをしようとした。だが、このマッチアップでは、コントロールデッキとしてプレイするべきだったんだ。ご存じの通り、スライはジャンクよりもかなり早いため、ジャンクが勝つ方法はスライの序盤からのスピードを除去でいなし、中盤以降は呪われた巻物でロックする。スライにも呪われた巻物が入っているため、火力の枚数はジャンクよりも多いことになる。だからジャンクの勝つ唯一の方法は、ライフを安全域に保ちつつ、相手にとって有効なカードを出していくしかない。

(ジャッカルの仔に剣を鍬にをプレイして)相手にライフを与えてしまうため、序盤ではライフ差をつけられるものの、これはボールライトニングに名誉の道行きをプレイして取り返せる。つまり仔に鍬を、ボールに道行きをぶつけることで、20ライフのまま中盤に移行し、ヴェグの聖騎士やサルタリー修道士などを出して相手を脅かすことができる。

似たような現象は、両者が基本的にコントロールデッキとして動く場合も起こる。同じPTQで、僕はHigh Tideデッキをプレイしており、このデッキにとって天敵のカウンタースリヴァーに当たった。カウンタースリヴァーはスリヴァー、崇拝、カウンターで構成され、呪われた巻物まで入っている。とはいえ、相手は自分がコントロールデッキだと思いこんでいたようだ。

2ターン目に水晶スリヴァー、4ターン目に崇拝を出してきた相手だが、その返しに天才のひらめきでライブラリーアウトさせて勝った。(1ゲーム目はこちらがパリンクロンで殴り勝った。他に相手に見せたのが錯乱、魔力の乱れにカードドローだったので、相手はこちらがクリーチャーが多いと思いこんだらしい)

いずれにしろ、相手はこのマッチアップにおいて、明らかにこちらがコントロールデッキだったにもかかわらず、自分がコントロールをしようとした。カウンターはこちらのほうが多い。相手はスリヴァーが入っているところに、こちらのデッキにカードドローとデッキ操作が入っている。相手にデュアルランドがある一方、こちらはThawing Glaciersが入っている。Thawing Glaciersのお陰で、こちらは毎ターン土地をセットできる。こちらは相手の渦巻く知識を錯乱でカウンターしてきた。つまり、こちらは毎回長期戦に持ち込んで勝つデッキというわけだ。

それゆえ相手のすべきことは、こちらに殺られる前に、殺ること。パワー2程度の適当なコストのスリヴァーを出しつつ、相手の青系のデッキがプレイしてくるもののうち、深刻な被害になりうる(たとえば神の怒り、仕組まれた疫病、それとこの場合High Tideのコンボパーツ)ものをカウンターしようとするのが定跡だ。相手はアグレッシブにいくべきだったと思う。水晶スリヴァー1体だけでは、Thawing Glaciersとカードドローでアドバンテージを稼げるだけの時間を与えてしまった。そのうえ、タップアウトするのは自殺行為にほかならない。こちらは転換を打つ手間すら省けたというものだ。

似たデッキ同士のマッチアップで、どちらがコントロールでどちらがビートダウンになるかについて、以下の3つが判断材料となる。

1ダメージソースの多い方はどちらか?通常は多い方がビートダウンデッキ。
2除去の多い方はどちらか?通常は多い方がコントロールデッキ。
3カウンターとカードドローの多い方はどちらか?ほとんど大概、多い方がコントロールデッキ。

もし君がビートダウンデッキなら、相手が殺そうとする前に殺さなくてはならない。もし君がコントロールデッキなら、序盤の猛攻を防ぎ、カードアドバンテージを得て優位に立つときまで生き延びなくてはならない。

役割としてのビートダウンとコントロールが正しくプレイされた例として、1998年のアメリカ選手権のとき、トップ8でPriceとPacificoが戦ったスライ対スライのマッチがある。表面上は似通ったデッキだが、そのデザインは大きな違いがあった。

Daveのスライは、Pacificoよりも呪われた巻物が多く入っており、ボガーダンの鎚や投火師も使っている。ビートダウンとしてのカードはジャッカルの仔とボールライトニングだけで、デッキの残りはコントロールとユーティリティ指向のカードだ。

Pacificoのスライは、ダメージを通すことを狙いに置いている。デッキの基盤は除去よりも高速軽量クリーチャーだ。ジャッカルの仔とボールライトニングに加え、蛮行ゴブリン、モグの下働き、スクアータの双騎兵にヴィアーシーノの砂漠の狩人。投火師やボガーダンの鎚のような類のカードは入っておらず、呪われた巻物が3枚あるだけだ。

このマッチアップでは、スタートはDaveのデッキが絶対に早いが、彼の役割はコントロールで、長期戦に備えなければならない。Daveは呪われた巻物を出した以外、ほとんどアクションらしいことをしなかった。Pacificoのクリーチャーを火力やブロックで除去し、やがて呪われた巻物で場を制圧して小さなカードアドバンテージを重ね、とうとうゲームを制した。

もしDaveがPacificoとダメージレースをしていたら、彼に勝ち目はなかったろう。双方のプレイヤーがノーガードで殴り合った場合、勝つのはダメージを通せるように作った方。(だが僕はプレイングこそが赤使いの命だと思っている)

最後に、スーサイドブラック対スライのマッチアップを例に取る。どちらも超高速デッキだが、スライが勝つ宿命だ。

ダメージ量が多いのはどちらか?スーサイドブラックだ。カーノファージ、肉占い、そして時に肉裂き怪物まであり、対コストでパワーの優れたクリーチャーが多い。憎悪のようなカードも入っていたりする。自分にすらダメージが入る。

除去の多いのはどちらか?スライだ。もしスーサイドブラックが呪われた巻物まで使っているなら、スライデッキはより一層与し易い。さらに、スライは単なるウィニーではなく、火力も入っている。

スライはとても早い(金魚デュエルなら4ターン)デッキだが、スーサイドブラックは、構成と儀式の引きによっては、金魚で2・3ターン目に勝つこともありうる。スーサイドブラックがビートダウンで、スライがコントロールデッキなのは明らかだ。しかしながら、スーサイドブラックは他のビートダウンデッキに対して勝てない。特に肉占いや肉裂き怪物が入っている場合、デッキとして余裕を持って動ける時間はあまりない。スライには火力が豊富にあるからだ。レスポンスの火葬で負けが確定するため、憎悪などプレイできる気がしない。そこで、ビートダウンができないなら、スーサイドブラックはコントロールデッキとして動くしかなくなる。

役割を見誤る=ゲームの敗北

サイドボード後、スーサイドブラックの対スライの相性はだいぶ改善される。「あなたにダメージを与える」と書いてあるカードを外し、除去とライフ回復に差し替える。こうしてコントロールよりに合わせて正しくプレイすることで、劇的とまではいかないまでも勝率は大幅に上がる。

Mike Flores
Cabal Rogue
Team Discovery Channel
madmanpoet@yahoo.com

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