ん〜、そろそろ顔を出す良い頃合いだろうか。ヨーロッパに行くたび、気候と時差に、タバコの煙で満ちたレストランに悩まされる。パリは美しい都市で、観光スポットも多くて歴史情緒もあったが、8ユーロもしたタバコ風味のクレープは僕の好みじゃなかった。僕は出国するころにはたいてい病気にかかるが、今回も例外じゃない。移動がきつかったため、2日目と3日目の成績は散々。たくさんやらかしたプレイングがそのまま負けにつながった。調子さえ良ければマネーフィニッシュ、あるいはトップ16も狙えたと思うが、それはこのゲームの仕方ないところだ。フランスに来るヨーロッパの人も日本人も同じ問題を克服していることだし。選手権参加で手に入るプロポイントのおかげで、次のシーズンからレベル3。だから今回の旅行は全く収穫がなかった訳じゃない。

まあとにかく、僕が世界選手権について言いたいのは・・・まあ、たくさんある。3つのフォーマットでプレイして、それぞれから学ぶところは大いにあった。当たり前のことだとは思うが、トップレベルの大会は、他のどんなトーナメントよりも学べる。当初、記事のネタは世界選手権後のスタンダードに備えたメタゲームの考察や、面白いデッキを紹介しようと思っていたが、エクステンデッドのPTQが迫っており、そっちをやっても悪くはないとも思った。色々考えた末、今週はエクステンデッド、来週はスタンダードをやる。

皆さんご承知の通り、PTQジェノヴァがまもなく終わり、間髪入れずPTQ横浜が始まる。プロツアー本番が時のらせんブロック構築となるため、PTQはエクステンデッド。面白くなること請け合いだ。これまで長々続いたリミテッドのシーズンも一息つける。(PT神戸もPTジェノヴァもリミテッドで、構築もやったのは世界選手権だけだった)チーム構築もあったが、これは全く別のフォーマットだ。コールドスナップから時のらせんまで、グランプリもほとんどリミテッドだった。個人的には、主にタイムシフトカードと不揃いなカードデザインのため、時のらせんのリミテッドはあまり好きなほうではない。いずれにしろ変化はありがたい。喜んで構築フォーマットに戻ろう。僕はPTQでプレイすることはないが、世界選手権で得た物は多く、この環境の初期と、グランプリテキサスに向けたアドバイスをしたいと思う。

前に書いた記事で、青白トロンのようなデッキをトーナメントに持ち込むのは良くないということを書いた。今でもそう思う。だが言葉が足らなかったのも確かだ。ウルザトロンはタイプ2でもっとも強力なデッキの一つで、これはそのままエクステンデッドでも同じことだ。このデッキをプレイして、ろくにチューンしなくても非常に強力ではあるが、脆く崩れるマッチアップもあることがわかった。トロンをプレイするのはお勧めできないが、青白でも、歯と爪でも、何かほかのタイプでも、依然としてメタゲームの一角を担うのは間違いないだろう。大量のマナで何かしてくるデッキは、もうそれだけで無視できない強さがある。記憶の欠落、差し戻しに神の怒りがあれば、トロンを揃え、無色マナを使って、何かひどいことをしかけてくるまで余裕で生き残れる。普通なら精神隷属機がベストだろうが、ほかのパーツも見たことがある。

僕が世界選手権でプレイしたのは、繁殖力とたくさんの「儀式」が入ったゴブリン。この手のゴブリンがDirty Kitty と呼ばれているのを見たことがあるが、その辺のネーミングについてはあまり関心がない。BDMやBilly Moreno あたりがリストを載せろといってきた。では、お言葉に甘えて。

Dirty Kitty         John Fiorillo

4 Goblin Matron
4 Goblin Piledriver
1 Goblin Sharpshooter
1 Goblin Sledder
4 Goblin Warchief
4 Mogg War Marshal
4 Skirk Prospector

2 Brightstone Ritual
4 Empty the Warrens
4 Fecundity
1 Grapeshot
4 Rite of Flame
4 Seething Song

1 Blood Crypt
4 Bloodstained Mire
6 Mountain
4 Stomping Ground
4 Wooded Foothills

2 Ancient Grudge
4 Cabal Therapy
4 Clickslither
1 Goblin King
2 Krosan Grip
2 Pyroclasm



ひどいデッキかって?一目見て、クレイジーなこのデッキをわかってもらえれば大丈夫だと思う。でなければ、たぶん出来損ないのゴブリンデッキにみえるだろう。このデッキのプレイングはバナナの皮の剥き方くらい簡単だ。信じてくれ。勝つときは卑怯くさいほどドローできて、マナも大量に出る。時のらせんでこのアーキタイプを強化したカードは、モグの戦争司令官と巣穴からの一掃。これらがなければコンボをスタートさせるだけの力がなかったろう。たしかにゴブリンデッキはゴブリンの戦長と群衆追いのビートダウンで勝てるが、その武器をそのままに、コンボという新たな力を得て、デッキの真価を発揮できる。

繁殖力とスカークの探鉱者を出せれば、速やかにコンボが発動できる。ゴブリンをマナにしてドローし、儀式をプレイしてマナを増やし、さらにゴブリンをプレイ。それを繰り返して、ゲームを終わらせるだけの巣穴からの一掃をプレイする。クリーチャーを大量に並べて殴るもよし、デッキを引ききって30点とか40点のぶどう弾を叩きつけるもよし。驚異的な早さで勝つことができ、早いときは2ターン目で勝つことすらありうる。ほとんどのプレイヤーには、いつコンボが発動したかがわからない。つまり、相手は次に何が起こるか予想がつかないし、こちらの動きにどう対処したらいいかなんて見当もつかない。

(世界選手権の)土曜日の結果は散々だった。このデッキは、プレイングのスタイルが勝敗をわける。ベルギーのBernardo Del Costa Cabral(青白トロン)と戦ったとき、僕は繁殖力と14体のゴブリンを場に出していた。向こうの妨害で攻撃できず、そのままターンを返す。Bernardoは神の怒りをプレイし、僕は14枚ドロー。手札ががっぽり増え、にんまりした僕の顔をよそ目に、Bernardoは3種類目のトロンを置いて、場に出したのは精神隷属機。結局自分のゴブリンで殺されることになった。試合には負けたとはいえ、面白いゲームだったと思う。

このデッキはまだ若干改良の余地はあるものの、ほとんど完成に近いと思う。このデッキに金属モックスが必要かどうかまだ決めかねる。ストームの数を増やせるのはよいが、スピードアップの代償に手札を犠牲にしなければならないのは厳しい。序盤に出す金属モックスは、手札2枚を費やして1マナしか増えない儀式になる。毎ターン出す必要はないし、それなら儀式の方がよい。もっとゲームの数をこなせば入れるべきかどうかはっきりするだろう。次は、代表的なマッチアップごとに、どのようにサイドボーディングするか、そしてそれは何故か解説する。

Boros Deck Wins

おそらく今のエクステンデッドでもっともポピュラーなデッキだろう。早くて強い。最軽量かつ最良のクリーチャーを、効率的な火力でバックアップするのは古きよき時代からの・・・いや、永遠に不滅のデッキだ。ボロス相手の場合、こちらが初手とドローでつまづいて、まごまごしているとあっという間に押し切られてしまう。サイド、ときにメインから入っているサルタリーの修道士に銀騎士は、想定の範囲内とはいえ、ちょっとばかり苦戦を強いる。もし初手が良くても、1ターン目にスカークの探鉱者を出さないように。(こちらの動きがわかっている相手なら)焼かれて一気に窮地に陥る。そう何度もアタックしてダメージを通すことができないので、コンボ要員のこいつが死んでしまうと厳しい。コンボするにしてもしないにしても、ありがたいことにモグの戦争司令官が使える。数がたくさん出てきて焼ききれないからだ。もうひとつありがたいのは、このマッチアップでは繁殖力を出さなくても良い。なすべきは大量のストームを発生させた巣穴からの一掃をプレイすること。ゴブリンを12体出し、さらにバックアップができるなら、もう勝利は決まったようなものだ。

サプライズとしてゴブリンの王をサイドインし、山渡りと火力を防ぐタフネスを追加する。つつき這い虫も投入だ。こいつは君が考えているよりいい仕事をしてくれるぞ!相手は、こちらのゴブリンを10体くらいなら除去できるだろうが、それ以上の物量で押せばもう防ぎきれない。

Tron

実際のところ、トロンは分の悪い相手だ。相手の記憶の欠落や差し戻しはこちらの手を遅らせると同時にカードドローまででき、すばやく大量のマナを調達できるようになる。クリーチャーがちらほら残ったとしても、バウンスしたり神の怒りで流すことができる。精神隷属機はこのデッキにとってやばいカードで、相手は君が考えるより上手にやりたい放題してくれる。

サイドは陰謀団式療法とクローサの掌握を投入すると良い。古からの遺恨も入るかもしれないが、それら全部を入れて何を外すかは難しいところだ。遺恨はこのマッチアップでは悪くないが、先を制するほうが僕の好みだ。印鑑を破壊できれば神の怒りを打たれないかもしれないが、それなら陰謀団式療法で落としておいた方が良い。

Gifts Rock

世界選手権でこのデッキに当たったが、ロックが今シーズンのPTQやグランプリでどのくらいいるかはわからない。もし当たったなら、倒すときはできるだけ1ターンで決めよう。相手に陰謀団式療法を連発されると厄介になるかもしれないが、繁殖力と探鉱者さえあり、他に若干パーツが残っているならコンボの発動は簡単だと思う。相手にエンチャント除去がないならやりやすいだろう。

このデッキ相手のサイドボードは煮詰まっていない。おそらく陰謀団式療法やクローサの掌握あたりが入ることになると思うが、そのデッキの動きを見極めたいところだ。陰謀団式療法を入れ、1枚差しのカードのどれかと輝石の儀式2枚を外すのが無難なところだと思う。

エクステンデッドには無限のアーキタイプがあり、それに付き合うと記事も際限なくなるためこの辺にしておこう。サイカトグ、Second Sunrise、赤緑ビートダウンが書いてなかったからということで、掲示板では叩かれることだろう。だがアグロ、コンボ、コントロールの3通りを覚えておけば十分だ。火力のあるアグロデッキ(アグロの大半はそうなのだが)の場合、要領はボロスと同じ。もっとも大事なことは相手を倒すことだ。必要のない限り、攻勢には出ないこと。プレイヤーが1・2ターンを待つことができず、焦ってゲームを落とすのをいくつも見てきた。自分にどれだけのターンが残されているか計算し、その最後の数分のために力を蓄えよう。

では、楽しんでくれ。そして幸運を。このデッキは面白いし、意外性がある。

-John Fiorillo

http://magic.tcgplayer.com/db/article.asp?ID=7240

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