そして幕が下りる。2006年の今年も、日本人がその力を存分に見せつけた世界選手権だった。明らかに、大部分のプレイヤーが、この環境におけるアグロデッキの勝率の高さを当てにしてボロスを使ったが、結果として世界を制したのはドラゴンストーム。もっとも、今回書きたいのはスタンダードじゃない。自分より成績の良かったプレイヤーによる、あまたの記事がすでにあるからだ。今回お届けしたいのはセプターチャント。

初めてエクステンデッドで使ったとき以来、セプターチャントに首ったけだ。そのとき使ったのはセプターの最初の派生系であるオースセプター。プロツアーでトップ8に入った、イングランドのNick Westが作った青白赤のセプターチャントは、不用意な相手をいきなりロックしてしまう。このフォーマットでは、出来る限り自分はセプターチャントをプレイすることにしている。去年のグランプリシドニーで、セプターチャントを使った僕は初日を7−0で突破することができた。まあ次の朝寝坊してマッチロスをもらい、そのせいでなんとも悔しい9位に終わってしまったのだが。

今シーズン、新しいデュアルランドのおかげで新しいデッキがたくさん出てきた。だが古き良きセプターチャントは依然として健在だ。プロツアー神戸のサイドイベントで行われたPTQ横浜では、森田雅彦がセプターチャントを駆って制した。(訳注:勘違いと思われます。制したのはチャーリーさんのトロン)そのデッキをさらにテストを重ねて最高の状態にチューンした。正直に言うが、エクステンデッドのテストはスタンダードと同じくらいやっている。スタンダードをプレイするとき、エクステンデッドの知識がものをいう。とくにコントロールデッキはそうだ。能書きはこの辺にして、これが僕の、世界選手権で4−2したセプターチャント。

ScepterChant Terry Soh

1 Eternal Dragon
2 Exalted Angel
2 Teferi, Mage of Zhalfir

2 Chrome Mox
4 Counterspell
3 Cunning Wish
3 Fact or Fiction
3 Fire/Ice
2 Force Spike
4 Isochron Scepter
2 Orim’s Chant
3 Spell Snare
3 Thirst for Knowledge
3 Wrath of God

1 Academy Ruins
3 Adarkar Wastes
1 Ancient Den
1 Bloodstained Mire
4 Flooded Strand
2 Hallowed Fountain
3 Island
1 Minamo, School at Water’s Edge
1 Plains
1 Polluted Delta
2 Sacred Foundry
1 Seat of the Synod
1 Steam Vents
1 Watery Grave

3 Condemn
1 Disenchant
3 Duress
1 Exalted Angel
1 Fact or Fiction
1 Hinder
2 Kataki, War’s Wage
1 Lightning Helix
1 Orim’s Chant
1 Stifle

デッキの中でいじって欲しくない箇所はマナベース。これは試行錯誤を重ねてできた、最強バージョンだ。せいぜい、サイドボードの脅迫が嫌なら湿った墓を島に替えるくらいだろう。

1永遠のドラゴン 1 賛美されし天使 2 ザルファーの魔導師、テフェリー

勝利までの道筋を「こじ開けて」くれるクリーチャーたち。永遠のドラゴンは26枚目の土地であり、岡本尋とのミラーマッチではこいつを使い回すだけで勝てた。賛美されし天使は、クリーチャーデッキ相手の場合、嘘か真かでめくられたら普通1対4で分けられる。この枚数だが、クリーチャーデッキをどのくらい意識するかによる。テフェリーはその逆で、コントロールデッキ封じのためにある。理想の動きは、相手のターン終了前にオアリムの詠唱をプレイ、解決されたらテフェリーを出す。こちらのターンでセプターを出して(狡猾な願いからもってきた)オアリムの詠唱か火/氷を刻印できれば終了。テフェリーとセプターチャントのコンボが成立すれば、相手が完全に呪文をプレイできなくなることも覚えておこう。また、テフェリーは待機状態のカードがプレイされるのも防いでくれる。最初、僕はテフェリーのスロットに正義の命令を入れていたが、コントロール相手の場合を含めてもその働きは不十分だった。だがテフェリー+セプターチャントのコンボなら、101%相手をロックできる。

4 等時の王笏 2 オアリムの詠唱 3 火/氷

コンボパーツたち。土地を外して4枚目の火/氷を入れたかったのだが、こちらよりも土地の方を優先した。だが4枚目が入ってもまったくおかしくない。実際のところ入れるべきなのだろうが、ほとんどの場合、2ターン目に出して相手のクリーチャーを除去しまくるというパターンができないと思われるため、個人的にはそこまでする必要はないと思う。まずはデッキが機能するための青青白白のマナを確保しなくてはならないためだ。オアリムの詠唱はコンボの最重要パーツだが、複数引いても嬉しくはない。2枚が適正だと思っている。等時の王笏はデッキそのもの。候補が8枚あるため、(詠唱、火/氷に願いから持ってくるカード)出れば問題なく刻印できるだろう。対抗呪文を刻印するのはお勧めできない。相手はセプター/カウンターを起動させるためにどうでもいいスペルを使い、それから本命のカードをプレイすればよいだけからだ。

3 神の怒り 3 知識の渇望 3 狡猾な願い 3 嘘か真か

デッキが機能するための歯車。神の怒りを使わないバージョンもあるが、正しいとは思えない。セプターチャントはクリーチャーデッキに勝てる。クリーチャーデッキに勝てないセプターチャントなど、存在価値がない。神の怒りはクリーチャーデッキに対する最高のカードで、それだけに白白2が出せるデッキは何枚か使うべきだ。糾弾や稲妻のらせんよりも遅いと思うかもしれないが、場を一掃して、相手が立て直させなければならないように追い込むことこそがベストだ。知識の渇望と嘘か真かは、エクステンデッドのドローカードとして定番だし、いまさら解説しなくてもいいだろう。狡猾な願いはデッキの「教示者」だ。本当のサイドボーディングもしたいため、願いで持ってくるカードの種類は最小限に抑えた。良さそうに見えても使われなかったカードを外し、サイドボードのスペースを作ることを優先した。

4対抗呪文 3 呪文嵌め 2 魔力の乱れ

デッキの盾。対抗呪文4枚は外せないが、あとは別に何でも良い。僕は自分より高いマナコストをカウンターできる呪文嵌めの大ファンだ。マナ漏出か魔力の乱れかで検討し、魔力の乱れになった。理由はボロスがエクステンデッドで多いだろうと思ったため。マナ漏出のほうが汎用性が高いものの、1マナ・パワー2のクリーチャーが溢れるこのフォーマットで、1ターン目のクリーチャーをカウンターできるカードはコントロールデッキにとって値千金だ。

サイドボード 3 糾弾

見てわかるとおり、クリーチャーデッキ用。稲妻のらせんはサルタリーの修道士、銀騎士、野生の雑種犬にマイアの処罰者などを殺せないが、糾弾なら問題ない。稲妻のらせんは、ペインランドのダメージやフェッチランドのコストのため、結局1・2点のライフしか得しない。禍汰奇が必要なさそうなら4枚目を入れるといいだろう。

3 脅迫

去年、僕は陰謀団式療法3枚と脅迫2枚をサイドボードに入れていたが、非アグロデッキに対して療法と正義の命令の組み合わせが強かったためだ。だが、ボロスの増加で、手札破壊よりも糾弾にスロットを割かなくてはならなくなった。正義の命令がテフェリーと差し替えられて陰謀団式療法はもう強くなくなり、脅迫だけが残った。これも禍汰奇を使わないなら4枚目を入れる。

1 賛美されし天使 2 戦争の報い、禍汰奇

禍汰奇が入ったのは、デッキの登録での最後の最後。もし2日までの成績が良かったら、トップ8で4−2すればよい相手と当たるため、リスクの高い親和は使ってこない。だが、賞金ラインに滑り込むために5−1や6−0が必要なら、親和は悪くない候補だ。さて、この辺から選手権3日目の状況を察してもらうことにしよう。賛美されし天使は対クリーチャーデッキで無類の強さを誇り、サイドからテフェリーと交代で投入される。

1 嘘か真か 1 稲妻のらせん 1 邪魔 1 オアリムの詠唱 1 解呪 1 もみ消し

最初の5枚は固定だが、もみ消しのスロットだけはメタゲームに合わせられる。まず、狡猾な願いからカードドロー、カウンター呪文、ライフ回復兼除去、アーティファクト・エンチャント破壊をサーチしたい。これで君の願いはほとんど叶えられる。持ってきたいカードがないため願いが役に立たない、ということはまったくない。アグロデッキならオアリムの詠唱なり、稲妻のらせんなりを持ってくればよいからだ。同様にコントロールには嘘か真かや邪魔を、解呪はユーティリティーに。もみ消しを入れたのは、MOのエクステンデッドでウルザトロンが流行っており、正義の命令や精神隷属機に対抗する必要があったためだ。これは浄土からの生命の対策をしたいなら棺の追放に、ボロスが多いなら原野の脈動にしてもよい。もっとも、ボロス相手の場合は願いを外す。願いで1枚のカードを取ってきて、さらにコストを払ってプレイするのは遅きに失するからだ。

僕のサイドボードには清麻呂の末裔は入っていない。多くの人がボロスに有効だと考えているようだが、僕はそうは思わない。というのも、このデッキはモックスと等時の王笏2つを使っている。どちらも余分にカードを「投資」しなくてはならない。出した当初はディスアドバンテージを背負う。(クリーチャーデッキ相手の場合)本当の意味のカードドローは嘘か真かだけなので、それほどカードがたくさん引けるデッキではない。こちらは土地は毎ターンおかなければならないが、相手(ボロス)は3枚置ければ十分で、残りは手札にとっておける。ほとんどの場合ただの2/3だろう。

最初のラウンドは、予想もつかないような白黒手札破壊ビートダウンに負けた。次のボロスは、2枚しかない解呪を2回とも的確なタイミングでプレイされて負け。ボロスはたいがいトップデッキによって勝つため、トップデッキして勝てるカードの多いボロスが使われるのももっともな話だ。次もボロスだったが、これは1ターン目にセプターチャントを決めて勝ち。4ラウンド目のバランスデッキで、時間切れ引き分けになりそうだったが、こちらがオアリムの詠唱と火/氷を刻印したセプターを出していることと、どちらも賞金と関係ないが、僕の方がナショナルチームに入っていたことから、ありがたくも勝ちを譲ってもらった。最後のドラゴンストームとゴブリンの2つはあっさりと勝利。

セプターチャントはオアリムの詠唱があるというただそれだけで、構造的にコンボとクリーチャーには有利だ。嘘か真かをプレイしたとき、クリーチャー相手の場合、賛美されし天使は1対4で分けられる。コンボ相手の場合、オアリムの詠唱が同様に1対4だ。こちらが詠唱を握っている限り精神の願望はプレイできず、儀式から9マナ出してドラゴンの嵐につなげることも出来ない。相手が煮えたぎる歌をプレイし、それにレスポンスでオアリムの詠唱をプレイして5点マナバーンさせるのは痛快ですらある。サイドボードの脅迫によって、入っていないバージョンに比べて苦手な相手とのマッチアップが改善される。クリーチャー相手の場合、カウンターでバックアップしつつ、神の怒りとセプターチャントで場を押さえられる。もっとも気を付けたいのは毎ターンの土地のセットだ。おそらくこれが一番難しい。1ターン目に魔力の乱れ、そして島と溢れかえる岸辺が手札にある状況なら、まず島から出すべきだ。仮に溢れかえる岸辺から神聖なる泉を持ってきた場合、1ターン目にして3ライフ失うことになる。島を持ってきた場合は1ライフで済むが、神の怒りが手札にあっても白白2が出せないことになりかねない。

コントロールには分が悪く、サイカトグやウルザトロンには歯が立たない。魔力の乱れ、オアリムの詠唱、神の怒りが死にカードになる。セプターよりテフェリーが、このマッチアップのキーとなる。というのも、セプターで何を刻印しても相手は対処できる。だがテフェリーを通してしまうともうほとんど勝ち確定だ。相手がまだ土地を置いてないアップキープに仕掛ければ、魔力の乱れも少しは役に立つだろう。脅迫もテフェリーを通すのに一役買う。もし一刻も早く場に出したいなら、空の王笏をブラフでプレイして、願いやカウンターを浪費させる手もある。また、相手はいつでもカウンターできるわけではないため、火/氷を刻印するのは難しくない。相手が王笏をどうにかできない限り、プレイしたとき常にカウンターを消費するか、出されることでアドバンテージを取られるかの二択を迫られることになる。

僕は地元のグランプリトライアルでもこれを使うつもりだ。ドローしてターンを終えるだけの相手を見るのは実に愉快だから、読者のみんなもぜひやってもらいたい。

エクステンデッドで一番やばいこと。1ターン目、セプターチャント設置。GG。

http://magic.tcgplayer.com/db/article.asp?ID=7239

-Terry Soh

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