体系的な思考

2006年7月1日
http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgcom/daily/zm42

ご存知のことと思うが、今回で最終回だ。これをもってこのThe Play’s The Thing のシリーズは終了する。MTGで出てくる全てのシチュエーションを取り扱うのは不可能だし、新しいカードが印刷され続ける限り、新たな可能性が発見されるよりも早く産まれる。連載時でさえ、扱えたのはMTGという地平のごく一部に過ぎない。しかしながら、まだ読者諸兄が見たこともないシチュエーションでも分析できるようになる手順というものが存在する。MTGとはかつて存在しなかったもの、他のどれでもないもの、よく知られていないものを扱うゲームだ。これらはMTG特有のものではないため、外からMTGの一般論に当てはめることができる。最終回の記事では、私が数年来煮詰め、毎週毎週テーマに応用させていた理論を扱う。それまでと異なり、今回はシナリオやその類のものというより、手順そのものに重点を置く。私の考えを通して、私がゲームでやったことを読者が読んで理解できるよう文章にした。

ステップ1:何をめぐるゲームか?

MTGは勝敗をめぐるゲームだが、どちらが勝つかを決めるのは何か?純粋に戦略上のプレイングというのもあるにはあるが、それは結果という段階の瑣末な事柄に過ぎない。MTGには様々な勝ち手段があり、それに至るまでの道ともなれば数知れない。この質問に関するよくある答えは以下の通りだ。

1テンポで決まるゲーム

テンポで決まるゲームには2つのタイプがある。1つ目は双方のプレイヤーが、どちらが先に任務を完遂することを競うもので、例えば一方は地上で優勢、もう一方は空でという場合。こういうゲームで最も大事なのは時間とマナの効率性だ。とにかく早く展開することが目的で、それが上手くいく限り他のことは二の次。片方のプレイヤーの手札が尽きない限り、追加でカードを引くのは関係なく、それゆえ問題はマナだったり必要なカードを引くためにデッキを掘り進むことだったりする。

テンポを巡るもう1つの形は、片方のプレイヤーがテンポで押し切ろうと、もう一方のプレイヤーがそうさせじと身を守る構図だ。古典的な例がコントロール対ビートダウンで、コントロールデッキはビートダウンに速攻で倒されないようにする必要がある。場を制圧することに成功したなら、今度はこちらが別な方法で勝ちにいく番だ。攻防が互角の展開なら、コントロールの側が合理的な形勢を取れた時点で大きなアドバンテージを得る。こうした事情で、早いデッキは遅いデッキの鈍重さに付け込むために、自らのリソースをわずかばかりの速さを得るために費やし、遅いデッキもそれに追随する。両方のプレイヤーにとっての関心事とは、終盤に入ったらゲームは遅いデッキのものになるのがさけられないのか、それとも早いデッキにもチャンスがあるのかになる。純粋なテンポを巡る駆け引きには他よりも込み入ったものとなりうる。

2カードアドバンテージで決まるゲーム

私がこのゲームを始めて以来、MTGは速くなり、デッキも進化した。そのためこれが2番目にくることになったが、それでもまだ非常に大事な要素だ。MTGの「原則」は、勝者が最も多くのリソースを持っている。全てのカードが平等に作られているわけではないため、保有数ではなく獲得数によってゲームが決まる傾向にある。こういうゲームの目的は、さらなるリソースの獲得であり、すなわちより多くのスペルと合計のカードの取り合いとなる。一般的に、両方のプレイヤーは持てるもの何もかもを使うため、私が「並べあい」と呼ぶ状態に落ち着く。自分のカードを使って相手を妨害し、相手が手に負えないほどのアドバンテージを得ようとするプレイングだ。

3激しいやり取りや、1枚のカードへのアクセスで決まるゲーム

これは一般的にはカウンター合戦だが、別にそうでなくともよい。つまり、片方のプレイヤーがコンボを発動させようとする、あるいはキーカードを通そうとするときだ。このモデルの伝統的な例がコンボデッキ対コントロールデッキ。コンボデッキが呪文を連打し、コントロールデッキに止められれば負け、押し通せば勝ち。こうしたゲームはゲームのポジションをめぐる駆け引きが行われ、カードのやり取りで自分の勝つチャンスを増やす、あるいは相手を不十分な状態にさせてやり取りに持ち込むべく画策する。両者はゲームが急展開しうる可能性に備え、あらゆる一挙一動に注目して細心の注意を払わねばならない。また、君はまだ準備ができていない、あるいはいないかのように見せる、相手の動きを誘う、などの要素もある。両方のプレイヤーが長い時間を費やし、完璧な手札を作るために不要なものを捨てることもある。

4リソースのうち、1種類の致命的な量の差で決まるゲーム

古くからの例が、相手の土地を全て破壊しようという土地破壊デッキだ。もし相手が呪文をプレイできるだけの土地があるなら、相手の土地を効率的に破壊し尽くすことにスロットを割いている土地破壊デッキに容易に勝ててしまう。土地破壊をする側が全ての土地を破壊してしまえば、何もできない相手を叩きのめすのに時間はかからない。これとは違うバージョンとして、片方がビートダウンで、もう一方がクリーチャー破壊が詰まったデッキの場合がある。相手のクリーチャーを破壊し尽くせばこっちのものだが、1体でも通してしまうとゲーム終了。この戦いは純粋なカードアドバンテージで決まるゲームに似ているが、ある1つのタイプが焦点になる。

5片方のプレイヤーが急所を突き、20ダメージ通して勝つゲーム

これはテンポにも近いし、リソースの致命的な量にも近い。2つの中間というところか。片方のプレイヤーが相手のライフ残量にのみ焦点を当てたゲームがこうなる。ゲームのコントロールを取られようが場を抑えられようが、致命傷を与えてしまえば何ら関係はない。突然起こる、ライフをめぐる攻防がゲームの全てだ。

6何かしらの要素で決まるゲーム

プレイヤーが相手の仕掛けを看破できるか、リスクを負うことにするか、陰謀団式療法や翻弄する魔導師で何を指定するか・・・何からでも勝負は決まりうる。大部分のゲームは最初の4つのうちどれかに当てはまるが、それが全てではない。そしてさらに・・・

7もう決まったゲーム

このへんは情報戦の記事で触れた。実質的に終わってしまったゲームもある。一本目以降もゲームは続くし、時にそちらに専念したほうがよいこともある。

8複数の要素が絡むこともありうる

これも頻繁に起こりうる。視野を狭くせず、ゲーム中最も大事と思える事柄だけにとらわれないようにするのは重要なことだ。プレイヤーが些細なことと捨てた箇所から多大な犠牲を払う羽目に陥る。そうなるのは簡単だ。自分のライフを無視して土地から14ダメージ受けたプレイヤーは、急に死ぬ危険にさらされるかもしれないし、スピードのために土地を3枚生け贄にしたプレイヤーは土地事故を起こすかもしれない。何が重要かは一度答えを出して、それで終わりではない。君は絶えず答えが変わりうるか問い続ける必要がある。

ステップ2:現在のシチュエーションを分析できる方法を探る

MTGというゲームで、起こりうる可能性について分析するのは容易ではない。どこまでの未来を見通し、どれだけの選択肢を数えることになるのだろう?君に与えられた時間は限られている。次に書くのは、今のシチュエーションを分析し、全ての選択肢を比べ、どれが最上の策か見極めるための方法だ。この二つに上手くなり、そして早くプレイングできるようになるための要領やコツを身に付けることが必要になる。以下が私が最も使う方法だ。

1勝敗がもう決した状況

どうにもできないカードがあるなら、どうにかしようとしてはいけない。どうやっても勝ちという要素があるのなら、敢えて何かしようとするべきではない。この場合は当てはめるシナリオはない。

2判断する必要がない状況

前と似ている。どういう道をとろうと結果が一緒なら、これもシナリオに当てはめる必要はない。

3はっきりと他よりも良い選択肢がある場合

たくさんの策があるが、1つは他よりも劣る。2つ選択肢があって、片方が「ほんのちょっとだけ」劣っている。少しだろうがちょっとだろうが劣っているならすぐに選択肢から消せる。

4行った決断を覚えておき、できるときにその決断を進化させる。

計画は正しいプレイングの基で、計画することとは考えを進めることだ。計画の変更も時には必要になるが、大部分はその計画を通すべきだろう。

5何をめぐってプレイしているのか、一定の方向のままで

過去の決断を覚えるのに加え、特に注意が必要な場合。マナ漏出を警戒することに決めたなら、同じカードをずっと警戒し続けるか、少しだけアドバンテージを得るカードをプレイしてみよう。持っていたら負けなら、臆病になることは何らない。

6過去にあった似たシチュエーションを思い出し、並行して考える

もし君が似たようなシチュエーションにあったことがあるなら、そこでどうしたかも覚えているはずだ。ゲームの後の反省があるなら、さらに考えが進んでいるはず。選んだ行動が過去のものより良かったなら何も考えることはない。悪かったなら、どれほど悪く、その前の決定にどの程度近いか考えよう。これらを併せて考え、それが創造的であればあるほど君の役に立ってくれるはずだ。

7対戦相手にはいずれを選んでも悪い結果になるように

君がとる行動の結末は、「対戦相手にはよろしくない」等の影響を及ぼしうる。使いすぎは危険だが、これこそが原則だ。選択の結果が対戦相手にとって悪いものなら、結果的に勝つか、勝ちに近づける。同様に、その逆も当てはまり、相手がどのようにプレイしてくるか読むことができる。対戦相手の起こす行動の結果、相手がその手札に関係なく有利になるならばその行動をとると思われる。考えるまでもないくらい悪い状況になるまでの道筋を読める感覚を自分のものにしよう。

8分岐点を見極める

分岐点とはゲームの形勢が片方のプレイヤーからもう一方のプレイヤーに移る場面を言い、それが目に見えることもある。もし分岐点がわかったなら、問題になっている事柄の再点検が必要だ。新たな戦線が作られようとしているか、あるいは逆に崩れつつあるかもしれない。何かプラン通りにいかず、変な結果に終わったときも分岐点でありうる。逆に場をきっちり見ている限り、多くの場合そういう兆候がないことがわかるだろう。

9より良い戦略、より良い戦術を模索する

ある戦略プランが現在のものよりも優れているなら、違う道をとることについて深い考察が要る。まずは長期的展望から考えること。

10直観を養う

これの大部分は「可能ならいつでもルールを発展させる」ことだ。時間の大半は自分のデッキがマッチアップやフォーマットに対してどのように動くか理解すること、そしてどう対処するかに使われ、それこそが最重要事項になる。手札にないからという以外の理由で極楽鳥よりラノワールのエルフをプレイする、一方でその逆をする理由を学ぶ。この相手にはペインランドを、あの相手にはギルドランドを先に−全てのことに意味がある。ある相手には除去を湯水のように使えるが、別の相手には貴重な貴重な食料だ。

そしてもちろん、常に黄金律がそこにある。

11問題だけに集中せよ

ワイズ・ワーズより、ジョン=フィンケルの言葉を引用。全ての物事が問題になりうるが、少々の有利不利を付ける選択は問題にならない。もちろん些細なアドバンテージが重要になることもあるが、今のところはあまり心配することもないのは明らかだ。

ステップ3:取りうる選択肢を比べてみる。分析に基づいて、どれが最も勝つチャンスが大きいか決めよう。

理想的には、各シナリオにおける勝率を計算することがこれに含まれる。厳密にはマッチごとの勝率から計算すべきだが、実用的には無視してよいほどの使い道しかない。人間の脳はそのようには考えないため、似たような方法を見つけなければならない。どうすればよいか決断がはっきりしているのなら問題はないが、似たものがあるなら1つに絞り込む要素を探し、残りのゲームの間それに賭けても良いか計算しよう。取りうる方法が多岐にわたるなら、同じように1つに定め、より良いものが見つかるまでそれに従うこと。一時的なものなら、残りのゲームで使えるものを探す。方法論的に、計画的に、また両方を適切に考えよう。

最終的に、多くの決定がいわゆる「審判の時」を迎える。平たく言えば2つ以上の選択肢があり、どちらを選んで優位に立つかという議論のことだ。ある人は複数の好手があると言い、またある人はどれも悪手だという。君はその中から最良の手を選べるほど精密なプレイングはできない。もう一度ワイズ・ワーズからジョン=フィンケルを引用しよう。「良いプレイングというものはない。正しいプレイングがあり、そして間違ったプレイングがあるだけ」

これは正しい。

これは自分自身に厳しくなれという意味ではない。厳密には「良いプレイング」とは君が行うプレイングが正しいかどうかわからないのだが・・・MTGは厳しい。プレイングそのものの問題というより、「良いプレイング」は実際には存在しないが、それが念頭にある限り、君は良いプレイングを意識してプレイすることができる。難しい話だが、できないと諦めるには惜しい考えだ。君があるプレイングを「良いプレイング」だと決めたとき、それが意味するところは、君の持っている考えと情報によって、合理的な選択であると認めるということだ。これには何かしら良さそうなものに見えるものを「良いプレイング」だと考えてしまう危険がある。これは良い形勢にあるプレイヤーに、適切ではないアドバンテージを与えてしまう。というのは、そのプレイヤーが見ている「良いプレイング」とは実際には「良い形勢」だからだ。

いくつかある「良いプレイング」の中から1つを選ぶが、どれが「正しいプレイング」かわからない場合、まずすべきはそのシチュエーションを(自動的に脳裏に浮かばないなら)想定してみることだ。記憶というものはMTGのプレイングにとって生命線であり、私が現役のときは、トップトーナメントで行った各ゲームの全てのプレイングを1週間後でも言うことができた。君が今気づくことなど、君がそれまで考えてきたことに比べれば微塵ほどもないだろう。私は複雑に込み入ったことを考える際、それまで考えたことのない新しい物事を必ず発見している。

想定できたなら、こんどは決断する番だ。勘に依るところもあり、自分の勘について知る必要もある。自分の勘の良し悪しについての話ではなく、自分が持てる勘のバイアスについてだ。自分の偏りを見極めよう。もし君が常に場をコントロールしようと考えており、選択肢が際どいものなら、コントロールしない道を選んでみる。反対に、超攻撃的なタイプならその逆。これは自分自身を阻害するが、それができるようになれば、よりよい決断ができるはずだ。

その決断とは、デッキ、フォーマット、ゲームの直観に及ぶ。加えて、ステップ2で書いたルールを合わせれば、難しい決断をしなくてはならないとき、デッキが君にどうプレイして欲しいかが自ずとわかる。ほとんど全てのプレイヤーが、基本的でわかりやすいデッキが要求する、そのスタイルに合った動きに内でしたがっている。「どれだけクリーチャーを犠牲にしても相手にダメージを」と言ってくるデッキがあり、また逆に「急がず場のコントロールに気を配れ」というルールのデッキもある。デッキと一つになれ。明らかにルールを破ったほうが良いならそうすべきだが、はっきりしないならデッキが作られているようにプレイせよ。リミテッドのデッキを組む場合はどのように勘を働かせるか、そしてそれに合わせてデッキをチューンすること。

ステップ4:前へ。

何をボヤボヤしてる?時間の無駄だって!

ステップ5:ずっと考え続ける

君のプレイングも、相手のも、友人のも、MOで見ているリプレイも、見ているもの全て分析をやめてはいけない。これこそが最高の学習なのだから。

最後に

10年来、このゲームは私にとって多くの意義があった。最高のゲームをプレイする機会を手にできたし、プロとして活動することもできたし、プレイして記事を書いて生計を立てることもできた。さらにはこのゲーム自体のデザインと開発に携わることもあった!もうこれ以上望めるものもない。少なくとも今のところは、私にとってこのゲームの時間は終わりに近づいている。このコラムが、そしてWizard’s of the Coast社との契約も間もなく終わる。私がこのゲームで得たものは大きいが、もう次の事へと移るときがきた。ひょっとしたら、いつか戻ってくる日が来るかもしれない。本当にさよならというものはないのだから。

楽しんでくれ!

Zvi Mowshowiz

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